ヴァイオリンを弾くにあたり、だいたいどのような方も、ご自分の身体に対する悩みを持っているかと思います。
わたしの場合は手が小さいので、和音をつかんだりするときには不利だなと思うこともあります。
でも今日は、手の大きい方の悩みを例にして、ブログを書こうと思います。
当教室にいらしている、大人から始められた男性で、3rd.ポジションでの半音の音程に苦労されている方がいらっしゃいます。
正しい音程を取るには、半音の音程関係にある指を重ねなければならないのですが、
これがどうにも苦しそうでした。
正直言って、手の小さい私には、自分では体感できないお悩み。
う~~~~~~ん。どうしたものか。
指を重ねないで、下の音程の指をいちいちどかす、という、生徒さんが考えた応急措置的な方法では、
今後早いパッセージを正確に弾くことはできるようにならないしなぁ、
と思っていたのですが、
先日のレッスンでふと気が付くと、狭い音程を取るために、その生徒さんの左肩が右肩に比して高く盛り上がり、左前の姿勢で、左の肩甲骨や腕にバリバリに力が入っていたのでした。
難しいことをやろうとして体に緊張が走ってしまい、不自然な姿勢になってしまうのは、
良くあることなのですが、これでは、逆に指先の微調整ができません。
音程を取るために、指先だけに意識を向けるのではなく、まず左肩の力を抜いて、両肩の高さを等しくし、
身体の開きを対象にすることをアドバイスしたところ、これが功を奏し、指を重ねることに無理がなく、
正しい音程が取れました。
苦労を感じていた生徒さんも、光が見えて嬉しそうでした。
始めに書いたように、
「自分の体型がこうだから、このテクニックは苦手だ」といった先入観にも似た考えは、
誰しも持ってしまうものですが、
この時わたしは、自分の師であるルジェーロ・リッチ先生に、学生時代に言われた言葉を思い出しました。
「手の大きい小さいは関係ない。肝心なのは、ブレーンだ」
もともとの体型は変えられません。
なので、テクニックを習得するために、体型そのものに問題点を見出すのではなく、
姿勢や身体の動かし方に問題は無いか、身体に余計な力が入っていないか、
根本的にさまざまに注意を向けながら、自分の身体に敏感によく考えて練習をするのが早道なのです。
そう考えてみると、体型のお悩みは、実は大した問題ではないかもしれません。