被災地の生徒さん

先日、台風15号で壊滅的な被害を受けた地域に住む生徒さんが、レッスンに来られました。

 

ご連絡をいただく前に、台風の被害情報から、しばらくレッスンを休むことになる可能性もあるだろうな、

と思っていたのですが、「停電や家の損壊があり、思うように練習できない」旨のメールをいただき、

本当にびっくりしました。

 

いや、練習どころではないでしょう!?

 

大規模災害なのですから、レッスンキャンセルでも大丈夫です、とお伝えしましたが、

お約束した日時に、予定通りに来られました。

 

何よりもご無事で、そしてレッスンに来られたことに、わたしは感動してしまいました。

 

事前に、音出しできず、左手の練習しかできなかったことは伺っており、

その練習状況に合わせたレッスンをすることはお話していましたので、

レッスンでは、基本練習をじっくりとやりました。

 

生徒さんは、いつもにも増して、無心に基本練習に取り組まれ、

ヴァイオリンを弾くことで、何か発散されたような感じでした。

微笑んで、「音出し」をとても楽しまれていました。

十分な練習ができなかったにもかかわらず、不思議といつもより大きな、響く音だったんです。

 

その様子を見て、生活の基盤を整えることは、最優先事項であることはまちがいないけれど、

人は、「衣食住」だけではない、なにか自分の好きなこと、打ち込めることで、

心を開放することができるのだなと、改めて思いました。

 

ヴァイオリンのレッスンが、なにかそういった意味でも役に立てるのなら、本当にうれしく思います。

ヴァイオリンが弾けるのは、本当に幸せなことだと思います。

 

「心の栄養」が、ヴァイオリンを弾くこと、学ぶことの本質だと深く信じられた出来事でした。