先生選びのポイント ~大人向けレッスン~

 先日、他のお教室で習われている男性の方が、体験レッスンに来られました。

 どんな先生が自分と合うのか、判定基準に悩まれている方もいらっしゃると思いますので、

その時の様子をご紹介します。

 

 その方は、2年ほどヴァイオリンを習っていて、今までジブリの曲など大人の初心者にも慣れ親しみやすい曲を

たくさん弾いてきたそうです。

 お話を伺うと、レッスン形態はあまり基礎に重点を置かず、

知っている曲をヴァイオリンで単純に音出しするというもののようでした。

 

 最初はそれで楽しかったそうですが、だんだんご自分の音質に疑問を持たれ、

先生に基礎をしっかりやりたい旨を相談されると、

「ものすごく時間がかかりますよ」とのご回答を得たとのことでした。

 

 体験レッスンのときに、少し弾いていただきましたが、

なるほど、弓の持ち方や左手の形などうるさいことを言われずにきたんだな、という印象を受けました。

 ご本人としては、自分の音はどうにも先生と違いすぎるし、ポジションチェンジもうまくいかない。

プロになりたいわけではないけど、いずれ人前で弾けるぐらいにはなりたい、とのことでした。

 

 うーーーーーん。

 「今の先生のおっしゃる通り、基礎をやり直すのはものすごく時間がかかりますよ」

と、これは率直にお伝えしました。

 

 大人の初心者のレッスンの場合、大きく分けて二通りあると思います。

 

1)基礎練習は少し匂いをかぐ程度にして、親しみやすい曲をたくさん取り上げる。

  ヴァイオリンの構え方など、姿勢については、習い始めのときに教えるが、

毎回のレッスンではあまり指摘しない。

  レッスン内容は、曲の弾き方(リズム、大体の音程、強弱)を重視し、いわゆる「楽しいレッスン」を目指す。

 

2)基本重視する。

  レッスンは、音階練習などの基礎練習に比較的長く時間を取る。

  楽器の構え方、身体の動かし方が音質、曲の完成度に直結することを理解してもらうため、

姿勢の改善点について、毎回のレッスンで指摘する。

  曲のレッスンは、教本に載っているものを主に取り上げ、リズム、音程などの基本的な演奏方法以外にも、

楽曲分析にも触れ、演奏技術の向上を目指す。

 

 1)、2)いずれにしても、どちらのレッスンが正しくて、どちらのレッスンが間違っているということは言えないと思います。どちらのレッスンにも良い面や、受講に当たって苦しくなる面があります。

 ですから、どのようなスタンスでヴァイオリンを習いたいのかという、ご自分の希望に照らして、ご自分と合う先生を探していかなければならないでしょう。

 

 参考までに、1)、2)の良い面、苦しくなる面を挙げてみます。

 

1)のレッスンを受講していく上で、良い面

・複数の知っている曲をヴァイオリンで音出しできるという楽しみを、単純に見出すことができる。

・最低限の練習時間を提示されることがないので、趣味として根気を求められることがない。

・演奏技術向上を目指しているわけではないので、壁を感じにくい。

・レッスンに通うのに、気負いが要らない。

 

1)のレッスンを受講していく上で、苦しくなる面

・初心者レベルまでの曲しか弾くことができず、曲の完成度が低い。

・弓を中ほど3分の1程度しか使いこなすことができず、音質が悪い。
・正しい姿勢で弾くことを強く求められていないので、短時間での演奏後に身体が痛くなることがある。

・2年程すると、自分の演奏やレッスン自体に対して、なんとなく「これでいいのか?」と疑問に思い始める場合がある。

 

2)のレッスンを受講していく上で、良い面

・演奏技術を向上させることができる。

・音楽センスが身に付く

・正しい演奏姿勢を習うため、演奏後の身体の痛みがあった場合でも、それが軽減されていく。

・演奏技術の向上から、アマチュアオーケストラへの入団など、次の目標を立てることができる。

 

2)のレッスンを受講していく上で、苦しくなる面

・毎日、時間を確保して練習することを求められるので、根気が要る。

・毎回のレッスンで改善点を指摘されるため、壁を感じやすい。

・1曲を完成度高く仕上げるために、努力が必要となる。

・レッスンで緊張する場合がある。

 

 ちなみに、わたしのレッスンでは 1)を選択することはありません。

 個人のペース(レッスン進度速度)に合わせますが、基本的に 2)のレッスン方法を選択しています。

 

 教室によって、いろいろなカラーがあると思いますが、わたしの教室には、やるからにはしっかりやりたいというお気持ちを持つ生徒さんが集まっています。

 体験レッスンでお話を伺い、1)のレッスンをご希望になっている場合は、2)のレッスンとの違いをはっきりご説明しています。

 

 ヴァイオリンを習いたい動機は、みなさんそれぞれで、また世の中にはヴァイオリンの先生がたくさんいます。

 ご自分のスタンスに合った先生を探して、納得した上でレッスン開始されることをお勧めします。