発表会出演によって得られること~子供の生徒さん編

 先日、勤め先の音楽教室の発表会を無事終えることができました。

 いろいろな年代の生徒さんに出演してもらいましたが、今回、ある小学校6年生の男の子の頑張りが、特に印象に残ったので、それについてブログを書こうと思います。
 最近は皆、小学校3年生ぐらいから塾に通い始め、特に毎日の練習が必要な楽器の習い事との両立はとても大変なようです。
その男の子も例外ではなく、それにもまして中学受験を目指しているので、今、勉強にとても力を入れています。一週間のうち何日かは、夕飯のお弁当を持って塾に通わなければなりません。

 そんなことから、ヴァイオリンを辞めてしまうことも切り出されたことがありました。

 しかし、彼にとってヴァイオリンは、昨日今日始めたものではなく、何年も続けてきたものです。

 どんな人でも一度辞めてしまえば、これまでに長い時間をかけて得た演奏技術であっても、その技術はあっという間に衰えてしまいます。また、実は進学校に進む子ほど、ピアノやヴァイオリンを習っている場合が多く、そのようなことを、わたしは親御さんともどもに説明して、なんとか続ける努力をするように説得しました。それも、ただなんとなくダラダラ続けるのではなく、発表会出演を目標としました。またそのために、さらに具体的な目標として、毎日の練習時間は短くても、集中力と注意力を高めることによって充実した練習をすることを課題にしました。

 そして発表会までの準備期間は、いつもより大幅に長く、半年以上を設定しました。

 しかしそれでも二ヶ月前まで、本人の中に不安が残っていました。
 「まだ時間はあるから!」

 実は、講師である私の中にも不安はありました。それでもここで目標を達成させるのが、絶対にこの子のためになると信じ、発表会1ヶ月前の申し込みぎりぎりまで頑張らせて、様子を見ました。

 彼はとにかく、何とか何とか頑張りました!!

 とにかく集中して、注意深く練習することを心がけました。連休中、時間に余裕があるときには、いつもより長時間、根気よく練習しました。そして仕上げを間に合わせました。

 

 発表会当日。

 緊張のある中、彼は自分の気持ちをコントロールし、本番の恐怖と闘い、細かなミスはあったけれども、

なんとか「演奏会」にふさわしい演奏を人前で披露することができました。

 目標通りやり切ったという充実した気持ち。

 彼のご両親もとても喜んでおられました。

 

 もし彼が、途中でヴァイオリンを辞めていたら、だからと言ってその分勉強したでしょうか?
 もし彼が、当初の目標をあきらめていたら、こんなに晴れやかな気持を味わっていたでしょうか?

 単に「気持ち」だけではなく、やり遂げた自分に対する自信を持つことはできなかったでしょう。

 また、緊張の中で自分をコントロールするという、本番の日でしか得られない大きな経験値を持つことはなかったでしょう。
 

 一見、人生を左右するとは思えない、ただの「発表会」ですが、それを前に逃げてしまうのとやり遂げるのとでは、その人の成長にとっては雲泥の差なのです。

 これは私自身が、今回改めて強く思ったことでした。

 そしてこの経験をもとに、彼にはもっともっと成長してほしい、とわたしは心から思いました。