なぜゆえに「基本」が大切なのか?(その2)

「ヴァイオリンでなにか曲の一つも弾けるようになれればいいな」

といったお気持で、レッスンを受けてみようかな?と考える方もいらっしゃると思います。

そこへ「基本!基本!」といわれてしまうと、「楽しいレッスン♪」というイメージとはかけ離れてしまい、

尻込みされる場合もあるのではないでしょうか?

 

確かに「基本重視のレッスン」というと、それはプロを目指す人に特化したレッスンであって、

子供のお稽古事や大人の趣味で習うには、必要以上にかたく厳しいレッスンのように聞こえるかもしれません。

 

実は、ここに大きな誤解があるのです。それは

基本練習=つまらない練習

ということです。

 

みなさんはもしかしたら、「基本練習」というと、スポーツ根性もののアニメやドラマから想像されるような、

繰り返しばかりのやたらにきつい単純練習を思い浮かべてはいないでしょうか?

 

前回お話ししましたが、基本練習とは、自分の身体への感覚を研ぎ澄ますための練習です。

これは単純に身体の動かし方だけではなく、聴覚を研ぎ澄ますことも含みます。

というよりも、楽器演奏の基本練習の場合は、聴覚能力を上げることを第一としています。

 

まず、身体への感覚が鈍ければ、思うようにリズムをとったり、きれいな音色で弾くことはできません。

また、聴覚が鈍ければ、調子が外れていてもどのように音程を直していいのか分からず、

自分の演奏は、なんだか下手なんだけど、どうしていいのかわからない、という状態に陥ってしまいます。

 

これでは、なにかひとつでも曲が弾けるようになれば、と思っていたのが、とてもではないけれど、「曲」として演奏できないということになります。

その状態が長く続けば、ヴァイオリンを弾くことは難しくてつまらない、ということになってしまうでしょう。

 

でも基本練習をすると、まず音色のレベルは即座に格段に上がります。

その違いは、幼児でもわかるほどです。

 

さっきよりもきれいな音が出た!と喜ばない生徒さんをわたしは見たことがありません。

(ちなみに、今日の5歳の男の子のレッスンでもそうでした!とても喜んでいました!)
また基本練習によって身体の動かし方に敏感になれば、リズムも正確に取れるようになり、

聴覚能力が上がれば、自分で音程を修正できるようにもなります。

 

感覚を研ぎ澄ますことに集中するので、その練習中もつまらないということはありません。

そしてその結果、上達を自分で実感できるようになり、楽しさが倍増するという仕組みです。

 

ですから、楽しいレッスンのためにこそ基本練習は欠かせないのです!

そこにプロを目指した人のためのレッスン、趣味の人のためのレッスンという違いはありません。

 

基本練習は、ヴァイオリン演奏の楽しさへの扉なのです。

だから、どのような状況でレッスンする場合にも、外すことのできない大切なものなんですね。